ョートショート

街角にて

「ちょっとそこのお嬢さん、いい話をお聞かせいたしましょうか?」
「え? 胡散臭い? 申し訳ございませんでした。名乗りもしないのは失礼な話ですね。私、こういう者です」
「ええ、どんな悩みでも解決致します。そうですね、皆さん最初は必ず信じられないと言います。それでいいですから、嘘だと思って最後まで聞くだけ聞いてみてください」
「ありがとうございます。納得して頂けて何より。さっそく、あなたの悩みを教えていただけますか?」
「ほうほう、最近彼氏とうまくいっていないのですか。それは困りましたね」
「笑ってなどいませんよ。相当不満を抱えているようですね。そういう相談はよく受けるのです。あなたの部屋はどちら向きですか?」
「東向きですか。男性の心というのは西から東に通り向けていってしまうものなのです。そういう部屋にお住まいの方にはこれをおすすめします」
「あなたの仰る通り、単なるハンカチです。これを東側の窓側に置いてください。これが恋人の逃げる心を吸い取ってくれます」
「それと、この折り畳み式鏡。これをハンカチの上、もしくは近くに置いてください。鏡の中にあなたの運気をため込むのです。ただし、鏡をあけてしまうと運気が逃げてしまうので気をつけてくださいね」
「では幸運を祈ります」

「おや、これはこれは数日前に会ったお嬢さんではないですか」
「何ですって? 彼氏が鏡をあけてしまった? その中から出てきた男性の写真と、あの男性もののハンカチのせいで浮気していると間違えられた、と。ほうほう、結局別れてしまったのですか」
「何を仰るかと思ったら。すべて私のせいだと? うまくいっていなかったのだから白黒はっきりしてよかったのではないですか」
「今更本当は仲直りしたかったと言われましても。それに、私は最初に言ったじゃないですか。『嘘だと思って聞いてください』って」


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 すんごい昔に某企画に投稿した作品を大幅に改稿したもの。台詞言ってる人の性格がかなり悪くなってます。

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