ョートショート

男は我慢

 今日は記念すべき彼女との初デート。
 ――のはずなのだが、俺はすでに我慢の限界にきていた。
(真佐子……早く来てくれよ)
 携帯の時計を見ると、待ち合わせ時間を四十分ほど過ぎていた。
『ゴメン! 寝坊しちゃった。遅刻するね』
 ゴメンのあとに顔文字のついたメールが彼女から来たのは待ち合わせ時間ちょうど。 遅刻といってもそれほど遅れはしないだろうと考えて、俺はその場で待っていた。
 ところが、彼女はなかなか現れなかった。
 約束の時間を二十分過ぎた頃から、俺は落ち着きがなくなっていた。
 三十分過ぎてそわそわと無意味に足踏みをしながら、彼女が出てくるはずの改札を見つめていた。
 そして現在、俺は待ち合わせ場所である時計の前を行ったり来たりしていた。
 こうして待っていると、一分が非常に長く感じられる。
(もう、行こうかな……)
 いつ現れるかわからない彼女を、こうして我慢して待っている自分が馬鹿馬鹿しく思えてきた。
 それに、耐える必要もないんじゃないか?
(しかし……)
 ここを離れてからすぐに彼女が来たらどうしようと考えてしまう。
(もう少し、もう少しだけ我慢しよう)

 彼女が現れたのは、それからさらに十分後のことだった。
「ごめんね。寝坊するし、電車も来ないし迷惑かけちゃったね。」
 彼女は当初の予定通り映画館へ向かって歩き出す。
 俺は本当に我慢の限界にきていた。
 やっぱり、ここで言った方がいいだろう。
「なあ、真佐子」
「ん?」
 彼女は俺にっこり笑って俺を見上げる。
「ホント、ごめんね。あっ、もう映画始まっちゃうね、早く行こう」
 俺がもじもじしていると、彼女は俺の腕をぐいぐい引っぱって映画館の方へ進んでいった。
 ちょっと、待ってくれ!
(やっぱり俺、ダメだ……)


マジでトイレ行きたい5秒前。



 1000HIT記念SSリバイバル。当時非常にお世話になっていたAさんという方が 「マジでトイレ行きたい5秒前(必死)」をくださった。。 「売られた喧嘩は買うべし!」(←売られてないし)と勢いごんだ結果がこれ。お題がオチってありなのでしょうか?
 気づかれた人はすごいですが、「カセイジン」と一緒にもらったお題です。どちらもこんなノリで 申し訳ない!


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