最近、何でもかんでもカリスマがいる。美容師にはじまり予備校教師、経営者、弁護士、医者、
アルバイター、高校生、エトセトラエトセトラ……。
そんな中、今度はカリスマのカリスマが現れたらしい。
カリスマ登山者である友人のリカちゃんにその人の職業を聞いてみたところ、
彼女(女性のようである)の職業は某中小企業のOLらしい。
リカちゃんが彼女を拝みに行くと言うので私も同行させてもらうことにした。
私にはカリスマのカリスマというのがどんな人だかさっぱり想像がつかなかった。
カリスマというのは目には見えないけど光り輝くオーラが全身から出ているものだ。
彼女はオーラが人一倍強いのだろうか?
ぜひ、そのカリスマを見てみたいと思った。
「あ、あの人だよ」
とリカちゃんが会社の制服を着た女の人を指さした。
私は期待に満ちた目でそちらの方を見る。
会社の制服はどこにでもありそうな地味なもので、彼女は少しだけ明るくした髪を後ろでまとめていた。
どう見ても何の変哲もない二十代半ばの女性であった。
彼女はどちらかというと……いや、はっきり言ってぱっとしないタイプに見えた。
美人でもブスでもなく一度見ただけでは覚えられそうにもない顔である。
いてもいなくてもあまり変わらないような感じだ。街を歩いていても
注意してみないと見つけることができなさそうである。
各界のカリスマ達よりも、一般ピーポーの私達の方が
正直、期待はずれだ。
「彼女、何か特技でも持ってるの?」
リカちゃんはあっさり首を横に振った。
「えーっ? じゃあ、あの人ただの普通の人じゃない」
すると、リカちゃんは大きなため息を一つした。
「やっぱり一般人には分からないのね」
は? 何が?
リカちゃんは拳を強く握りしめて言った。
「彼女こそカリスマ内のカリスマ! どんなカリスマが真似たってできないわ、
あの彼女の存在感のなさは!」
カリスマブームも終わりましたね。
ショートショートだとつい変な名前を付けたがる傾向があるのですが、今回は珍しく普通の名前
を持った人物が出てきました。その代わり普通の人物じゃないみたいですけど。
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