「カセイジンはさー、しし座流星群に乗ってくるんだろー?」
そう言ったのは平原斗夢、小学五年生。トムとかいいながらバリバリの日本人だ。
俺が無視していると反対側から声が聞こえた。
「それよりさ火星にはしし座流星群じゃなくて、チチ座流星群があるんだろー?」
下品な発言をしたのは風間滉哉、同じく小学五年生。どうやったらこれで「ひろき」と読めるのかが俺にはわからない。
二人とも俺がバイトしている個人指導塾のまったくもってかわいくない生徒である。授業が終わったにも関わらず、なかなか帰ってくれない。俺はとっとと指導記録書いて帰りたいのに。
無視していると両脇からつつかれた。
「「カセイジンのくせにシカトすんなよ」」
「お前ら、うるさい」
「カセイジンのくせにお前だってー」
「カセイジンはドウテイだってー」
どこでそんな言葉覚えたんだ。
そこに塾のオーナーから救いの手がさしのべられた。
「斗夢君も滉哉君も今日は水曜日だから好きなお笑い番組があるんじゃないの?」
二人ともはっとして「やべえ」と言いながら教室から出て行った。
「オーナー、ありがとうございました」
オーナーは嘆息する。
「加瀬井君もいい加減学ばないとね」
はい、いつもすみません。
俺の名前は加瀬井神という。
ひらがなで書くと「かせいじん」。
ふざけているようだが、本名だ。
死んだ親父が何を思ったか息子に神という名前をつけた。おふくろの再婚相手が加瀬井さんだった。それだけの話だ。
この名前で苦労してきたこと数知れず。特にしつこいのがあの小学五年コンビだった。名前に関しては俺の世代からすれば斗夢も滉哉も同じレベルじゃないかと思っている。言えないけど。
「ただいま」
リビングに入るとお袋が一人でソファに座っていた。
「あら、おかえりなさい。お父さん遅いって言ってたし、あなたも帰る時間わからなかったから先にご飯食べちゃったの」
お袋がキッチンへ行くと、誰もいないはずのリビングでズズッとお茶をすする音がした。
「やはり典子殿の入れるお茶は旨いのう」
リビングのテーブルの上に小さな生命体が仏壇用の湯飲みを持ちつつ、ちまっと正座していた。全身乳白色の肌、逆涙型の顔、大きなラグビーボール型のつり上がった赤い目、顔の大きさに不釣り合いな細い身体。身長は約十五センチ。
自称火星人。
彼(多分)は火星から日本(正確には地球)に留学しにきたらしい。火星のことについて聞こうとすると二言目には「おぬしは火星を侵略する気か」とくるので、詳しいことは知らない。
なぜ火星人と知り合ったのかなどと野暮な質問はしないで欲しい。人には触れてはいけないことがある。なぜ彼女が出来ないのかと聞くのと同じように。また、火星人はタコのような容姿ではなかったのかという声もあるだろうが、現実はここにある。
「特にタイ焼きとの組み合わせは最高なのだ」
火星人の前には食べかけのタイ焼き。こちらは普通サイズ。
「そんなこと言ってくれるのピロちゃんだけだからお母さん嬉しいわ」
ピロというのは火星人の我が家でのあだ名である。本名は教えてもらったものの、我々地球人にはとうてい聞き取れない音の塊であったため、お袋がピロと名付けた。名付けたと言うよりもお袋にはピロと聞こえたらしい。
「なんとっ! 神、おぬしはなんて親不孝なのだ。わたしは悲しい、悲しいぞ」
何でお前は居候のくせに上から目線なんだよ。
「本当ピロちゃんって優しいわね。神も綾ちゃんもお母さんに冷たいんだもの」
綾ちゃんというのは妹の綾花のことだ。現在中学二年生。俺から見ても微妙なお年頃である。
「別に冷たくはしてないけど」
「お母さん、ピロちゃんがこの家に来てくれてよかったわ」
「典子殿! 拙者ありがたき幸せ!」
ピロが泣き真似をした。実際に涙は出てこないんだけど。どこでそんな表現覚えたんだ。どうせテレビの見過ぎだろう。
「神、食後のDVDを見るぞ。典子殿が録画しておいてくれたのだ」
夕飯を終えてこっそり自室へ戻ってきたつもりだったのに、後ろからトテトテとピロがついてきた。体とほぼ変わらない大きさのDVDケースを手にしている。そもそも食後のDVDって意味不明。
「お袋と見ろよ」
「典子殿とは日中に見たのだ」
「じゃあ、パソコン貸してやるから勝手に見てろよ。言っとくけど音は小さくしろよ」
「神も日本国民なら見るべきであるぞ」
「他に見たいテレビあるから」
「神の非国民!」
お前なんか地球人ですらないじゃないか。
パソコンにDVDだけセットしてやって、俺はベッドに寝っ転がってテレビを見はじめた。悪ガキコンビと同じお笑い番組だった。悪ガキ達と同じものが好きというのは癪なんだけど、面白いものは面白いんだからしょうがない。普段ならピロも喜んで見るのに、DVDを優先させるとは珍しい。
しばらくすると背後で「うぬぉぉぉぉぉ」といううなり声が聞こえた。
「むごいっ、なんてむごすぎるっ」
すすり泣くような声に、机をばんばんたたく音が続く。
「うるせえ」
小さな声で主張してみるも、ピロは気づかない。むしろ机をたたく音はどんどん大きくなっていく。あんな小さい体でどうやったらこんなに大きな音が出せるんだよ。
「いい加減うるさい。綾花に怒鳴られても知らないぞ」
ピロの方をみると頭を机にガンガン打ち付けていた。それも割れんばかりに。
パソコン画面に映っているのは片田舎の民家だった。民家にマイクを手にした女性が近づいていく。
「ここが、○○容疑者の住んでいた自宅です」
画面の左上には8:40の文字。
これって今朝のワイドショーじゃねえか。
ワイドショーを録画して見るとか、その気が知れない。ピロの話し方だと朝も見てるっぽいのに。
「む、神よ。今わたしを馬鹿にしたな」
「ワイドショーなんか一回見れば十分だろ」
「何を言っているのだ。ワイドショーには日本の出来事がいっぱいつまってるのだぞ。社会勉強にもってこいなのだぞ。わたしなんか毎日DVDで復習しているというのに」
毎日録画してたんかい。
ワイドショーなんて偏った知識を得るより、新聞を読んだ方が何倍も役に立つ。それにこいつは留学しにきたと言いながら、テレビばっかり見てるんじゃないか? 火星人だからってそれで許されていいのか。それなら俺だって火星に留学をして毎日遊んで暮らしたい。
「とにかく、静かにして見ろよ」
それだけ言って、自分のテレビに戻る。その後もピロは視界の端で何か言いたげにプルプル震えてたり、スキップをしていたり、逆立ちをしていたりして目障りではあったんだけど、俺の言うことは守っていたから見なかったことにした。
テレビが終わって風呂にも入って、少し早いけど寝るかなと布団に潜り込んだところで後頭部をぽかりと殴られた。
「神よ、何をしておるのだ」
「何を、って寝るんだよ」
「馬鹿者。今日は何の日だと思っておるのだ」
何の日って……。今日家族で誕生日の人はいないし、明日はレポート提出日ではないし、ピロに関する記念日だったら知ったこっちゃない。
俺の頭を乗り越えて、目の前に仁王立ちしたピロはズビシと指を俺の鼻に突きつけた。
「今日はしし座流星群を見るのだ。今日が一番よく見えるそうだぞ」
そういえばテレビで言っていた気がする。悪ガキ達もしし座流星群がどうのとか言ってたのはそういう訳だったのか。
でも、俺には関係ない。
「じゃ、俺は寝る」
布団を頭までかぶると、足下から布団を引きはがされた。
「何すんだよっ」
「ふふふ、神のことだからそう言うと思ったのだ。しし座流星群の魅力をわかってないと思ってある物を用意してあるのだ」
「俺は寝たいんだけど」
「まずは、これを見よ!」
ピロが指さした先にはパソコンの画面。ちょうどしし座流星群の解説をしている。って、これさっきのワイドショーだし。用意もくそもない。内容は流星の仕組みから始まり、なぜこの時期に見られるか、見られる時間帯等々想像の範囲内であった。
俺は布団に潜ったまま画面を眺めていた。
「おぬしはやる気があるのか?」
「ない」
即答。
しし座流星群の当たり年は数年前に来てしまって、今年は見られたとしても一時間に数個らしい。そのためにわざわざ起きていようとは思わない。
「一人で見ればいいじゃん」
「この感動を一人で味わうことが出来るだろうか! いや、出来ない! ともかく、布団から出るのだ」
ピロにぐいぐいと腕を引っ張られて布団から引きずり出された。小さいくせに何だ、このクソ力は。
「それでは、しし座流星群を見るのだ。しっしっざー、しっしっざー♪」
ピロが歌い出したら、止まらないという証拠だ。あきらめて窓の方へ向かう。曇ってればいいのになと外を見ると、俺の期待を見事裏切る雲一つない夜だった。まだ家庭の電気がついているから、見える星の数は少ないが、オリオン座くらいだったらわかる。正確にはオリオン座と夏の大三角形しかわからないんだけど。
「神、窓をあけろ」
「やだよ、寒い」
「着込めば問題なかろう。ガラス越しに見たら意味ないのだ、臨場感が減るのだ」
ピロのことだ。放っておくと窓ガラスを割りかねない。仕方なく窓を開ける。顔を突き刺すような空気が襲ってくる。俺はジャケットを羽織った。
ぼんやり空を眺める。
今日は月は出ていない。田舎だったら星がよく見えただろう。
しし座流星群というのは要するに流れ星がたくさん落ちてくるわけだ。ということは願い事をたくさん出来るんじゃないだろうか。彼女欲しい。金欲しい。苦労しないで単位取りたい。悪くないかもしれない。
などと甘いことを考えたのもつかの間。
寒い。
このままいつ現れるかわからない流星を待ってるとか無理そう。深夜に向けて気温は下がっていく一方なのだ。願いの効力が少し落ちてもいいから、窓越しで見たい。
ガクガク震えていると、ぴとりとピロが俺の腕にくっついてきた。さりげなく手を腕に回しているように見えなくもない。
「何すんだよ」
「寒いときはこうするとよいのだ。先週のドラマでやっていたのだ」
それ、絶対恋愛ドラマだろ。ピロは小さすぎてちっとも暖かくない。気色悪い。俺はピロを自分から引きはがして窓枠に置いた。
「おぬしはなんて薄情なのだ。いつも彼女とのあんなことやこんなことに憧れているから、代わりにやってあげたというのに」
何だ、それ。
「今だって、彼女が欲しいと考えておったのをわたしは知っているぞ」
「流れ星が落ちるまでに三回願い事を唱えれば叶うって言われてるんだよ。ってか、お前また俺の考えてること読んだだろ!」
火星人はエスパーめいた力を持っているらしく、人の心が読めるらしい。欲望とか妄想というのは自分の中で悶々としてるからいいんだ。全く迷惑な話である。
「ピロって他の人の考えてることも読んでるのか?」
ピロが一歩後ずさった。
「神はなんて失礼なことを言うのだ。わたしがそんな破廉恥なことをするわけがなかろう」
俺はいいのかよ。
「神とわたしは一心同体も同然だからいいのだ」
全くわからない。
気づけば一つまた一つと家の明かりが消えていき、星の輝きが増していた。星の勉強をしておけばこの時間ももっと有意義に過ごせたんじゃないだろうか。彼女がいたならここでポイントが稼げる。
「のう、神。なぜしし座はしし座というのだ?」
「どこかの学者がそう決めたからだろ」
「わたしにはどうしても獅子に見えないのだ。パソコンで調べたのだが、あれは馬なのだ」
珍しく同意見だ。オリオン座とかおとめ座とかどの辺が? としか言えない。心の目で見ても人の形には見えない。
「ロマン、じゃないかな」
しし座を獅子の形に見ることは不可能だが、ロマンで獅子の形に見ようという気持ちはわかる。
「ロマン、よいのう」
それから男のロマンについてや、見ていたテレビについて喋っていた。
そのうちにネタは尽きて、二人でぼんやり空を眺めていた。ピロはいつの間にか仰向けに寝ころんでいる。ずるい。俺だって横になりたい。いい加減首痛いし。寒いし。
しかし、待てど暮らせど流れ星の現れる気配はない。
やっぱり当たり年でないのに見ようとしたのが失敗だったのではないだろうか。
ピロには悪いが、風邪を引く前に寝かせてもらおうと思った時だった。
シュッと視界の端が光った。
「あっ」
細くて早くてたった一瞬の光の筋。間違いなく流れ星だ。
願い事唱えるの忘れた、じゃなくて。
「ピロ、見たか?」
横になっていたはずのピロがいつの間にか立っていた。赤い目の光りがどんどん強くなっている。ピロの体が小刻みに震えた。ガガガガガガッと壊れた洗濯機のような音がする。
「おい、大丈夫か?」
返事はない。
プシュシュー。
ピロの全身から水蒸気のようなものが吹き出てきた。ピロの体に毛穴はないはずなのだが……などと言っている場合ではない。
何とかしなければならない。
ピロの様子は故障した機械そのものであり、爆発してもおかしくないと思えた。しかしながら、元に戻す方法などわかりようもない。とりあえず、窓から落ちる前に押さえつけておいた方が良さそうだ。人命、ならぬ火星人命優先。
ピロをつかんだ、その時。
「あちちちちっ」
ピロの皮膚が熱した鉄のようになっていて、無意識にピロを投げ捨てていた。ピロは弧を描いてベッドの上に落ちた。しばらくするとピロから発せられていた音が消えた。暗闇の中、目だけが赤く不気味に光っていたが、それも消えた。
落ち着いた……か?
「何すんじゃーい!」
みぞおちに突き刺すような衝撃を受けた。反射的に腹を押さえると、むにりとした感触がした。ピロに跳び蹴りを食らったのだと気づくのに少々時間を要した。
「わたしを何だと思っているのだ。人を投げ飛ばすとは言語道断。失礼にも程があるぞ」
「違うよ。お前が窓から落ちないように押さえようとしたら、熱かったんだよ。こっちの方がやけどしかねなかったんだからな。ってか腹痛いし」
まだ手がジンジンする。ピロの方は怒っている割に怪我をしたふうでもないし、痛そうにもしていない。不平等だ。
すると、再びシュッと視界の端を光が横切った。
「あ、二つ目も逃したっ」
ピロが器用に人の体を渡り歩いて、窓から身を乗り出した。
「何を逃したのだ?」
「流れ星だよ。お前のせいでまともに見れないし、願掛けし損ねるし」
「おお、流れ星よ! どこにいるのだ? わたしも見たいのだ。しっしざー、しっしざー♪」
両手をヒラヒラさせて踊り始めるピロ。
「お前から見えたかわかんないけど、今空を光が走っていっただろ、あれだよ」
しっし、でピロの歌が止まった。赤い瞳が虚空を見つめたまま動かなくなった。
「あれはわたしの代わりに仲間が彗星を打ち落としてくれたのだ」
今度は俺が固まる番だった。
言ってる意味がわからない。
「火星はたまに彗星が衝突するのでな、我々が自ら打ち落とさなければいけないのだ。今、わたしが打ち落とそうとしたらおぬしに邪魔されてしまったが、仲間が代わりにやってくれたのだ。そのときの破片が地球の大気圏に突入したのだな。そうか、それをここでは流れ星というのか。獅子は全く関係ないではないか」
頭がこんがらがってついていけません。
要するに、我々が流れ星と呼んでいるのは、火星人が彗星を打ち落としたときの流れ弾が地球に飛んできていると解釈すればいいんだろうか。
ピロがこくりと頷いた。
「わたしが彗星を打ち落とす迎撃モードに入っていたらおぬしが邪魔をしたのだ」
邪魔って、壊れたかと思って心配したんだからな。それにしても火星人ってそんなコスモレベルのことができるものなのか。
「おぬしは火星を侵略する気か?」
いつもの台詞が出た。絶対火星人が地球を侵略しに来る確率の方が高いから。
「そうだ、いいことを思いついたのだ」
ピロの目がキラリと光る。本人のテンションはメルヘンであるが、いかんせん赤いので怖い。
「彗星をバンバン打ち落として流れ星をたくさん降らせるのだ」
……え?
ガガガガガッ。
ピロの全身が小刻みに揺れる。
「待て! 地球からそんなことされたら近所から不審がられるからやめてくれ。」
半ば頭から押さえつける格好で、ピロを制止させた。揺れ動くのをやめたピロは腕組みをする。
「それもそうだな」
考え込むような格好をしたピロの目が淡い青色に光った。五秒程するといつもの赤に戻った。
それと同時に。
シュンッ、シュンッ。
実際に音が聞こえるわけではないけど、空が騒がしくなった気がした。幾つもの光の筋が現れては消えていった。尾の長いもの、細くて一瞬しか見えないもの、太さも光の強さもはまちまちであるが、どれも地平線をめがけて一直線に落ちてくる。一つを追いかけようとすると、別の所でまた一つ現れて全てを追うことが出来ない。光の雨が地上に降り注ぐとはこういうことなのだろう。一方で満月でもないのに空が異様に明るく、昔映画で見た地球が次々とレーザービーム攻撃を受けている光景を思い出した。
俺は口をあんぐり開けたまま、まさしく天体のショーから目を離せずにいた。寒いのも完全に忘れていた。
「仲間達に頼んでやってもらっているのだ」
結局はお前の仕業か。目が青い時は火星と交信している時だと、前に説明されたことがある。
「さあ、神よ! 好きなだけ願い事を唱えるがよい」
……はい?
「これで願い事をし損ねることもなくなるであろう。これなら神でも彼女ができるのだ!」
綺麗とか恐ろしいとか一瞬で吹き飛んだ。さっきのピロのように複数の火星人がガガガガガッと振動しているのを想像する方が怖い。
頼むから俺のためにという理由で自然の摂理をねじ曲げるのはやめて欲しい。明日のワイドショーで観測史上最大規模の流れ星を観測、専門家でも原因は不明ってやってるのが容易に想像できる。実際は火星人が遊び心でやったんですなんて言えない。
そりゃ、流れ星に願掛けしようとか思ってたよ。だけど、神「でも」って何? 俺だって自力で彼女くらい作れる。
「む、さんざん彼女欲しいとか言ってたくせに。自力で作れる奴ならとっくに作ってるはずなのに」
うるせえ。
「俺は寝る。お前も流れ星の事実を知って満足しただろ」
窓をぴしゃりと閉めた。ジャケットを床に脱ぎ捨てて布団に潜り込む。布団も完全に冷え込んでしまった。
「図星なのだ! 恩を仇で返すのか!」
恩を勝手に売られたんだ。
「ならば、わたしがしこたまタイ焼きを食べられるように願ってしまうからなっ。神のことなんて知らないからなっ」
横になった途端眠気に襲われて、ピロの言葉の最後の方は聞こえなかった。
窓からは深夜まで白い光が差し込み続けた。
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