「500字の心臓」参加作品
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たぶん好感触

 バスッ。
 白球は勢いよくグローブに吸い込まれていった。
「今から無茶するなよ」
 相方から球と共に返ってきたのは評価に加えた忠告であった。感覚を確かめるように右肩を回す。それがどんな球になるかは腕を振りかぶった瞬間にわかる。
「わかってるよ」
 いかんせんスタミナ勝負の世界。ただでさえ暑さで体力は消耗するのだ。本番前からのペース配分は重要となる。でも、確証が欲しかった。
 噴き出る汗を袖で軽く拭ってから一つ深呼吸。さっきのフォームをなぞるように振りかぶり、体重移動を行い、流れに乗って腕を振る。
 ドスッ。
「文句なしの重さだな」
 あと少しだけ投げ込んでみたいという欲望に駆られたところで、集合の合図が聞こえた。
 視線を遠くへやると、スタンドの前の方の席は埋まりつつあった。さらにその奥には、良くも悪くも白球が映える雲一つない青空。
「もう時間か」
「今日はなんとなくいける気がするぜ」
 相方のなんとなくは当たることが多い。それが自分の予感を自信へと変える。
「いや、何が何でもいこう」
 拳を軽く付き合わせてから、監督の下へ小走りする。
 俺たちの最後の夏が始まる。  



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 第86回タイトル競作  「500字の心臓」参加作品。
 ×1個△1個。タイトルにそぐわないのは言うまでもなく。もう少しスッキリまとめられればよかったと反省。


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