「これはどういうことかね」
私を呼び出した部長は、表情をこわばらせて一枚の写真を差し出した。
ついにばれてしまったか。
目を落とすと、写っていたのは間違いなく自分であった。
「プライバシー保護が叫ばれる時代で、申し訳ないと思ったが調べさせてもらった」
写真を持った部長の手は小刻みに震えていた。
私はそんな部長をよそに、凶器になるようなものは持っていないな、などと考えていた。何かの間違いで部長を殺してしまうことはない。
仲間より被害は最小限にしろと言われているのだ。
「こんなことになるなら、もっと、早く気づくべきだった」
気づいたところで結果は変わらない。
「なぜ言ってくれなかったんだ」
言えるわけがない。言ったら今までの努力が無駄になってしまう。
私は再び部長が手にしたものを眺める。健康診断の時のレントゲン写真。よくこんな物で気づいたなと感嘆するのみであった。
「まさか、君が脳腫瘍だったなんて。しかも、骨が溶けてしまうまで進行していたとは」
ああ、そうか。確かに写真の頭部は真っ黒い空洞になっていた。
それにしても、なんて平和な星なんだ。侵略できるのも時間の問題だな。
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